ここ数日は、お昼過ぎから夕方になったかと思うとすぐに暗くなりますね。令和四年の冬至(とうじ)は、12月22日(木)です。冬至は、一年で夜が長く昼が短い日で、お天道様の力が一番弱まった日であり、ここを境にして陽が伸び始めるため「一陽来復」です。周易の☷☳地雷復が語源となった言葉です。陽が伸びていく動きは、十二消長卦のコラムをお読みいただくと、より理解が深まると思います。
さて、人間が作った暦日で新年の切り替えとは別に、古代人は自然と一体の暮らしであったため兆しを感じ取ったわけですが、なにも古代人でなくても、なにやら運気も上がりそうだと感じてしまいます。
易占を奉ずる私たち易者の中では、この冬至の日に、年筮(ねんぜい)を執る風習があります。冬至占とも言われますが、この年筮は、筮竹を使って一年の運勢を占うもので、六変筮で執る方が多いと思いますが、中には、十八変筮法(本筮法)で執られるという手練れの方もいらして、頭が下がります。
冬至に年筮を執れなかった場合は、元日や節分など、切り替わる日に行うとよいでしょう。
一年の感謝を込めて、筮竹もお手入れ。
日本易学振興協会の新年会で、以前まで参加された方への特典として、宇澤周峰先生から年筮をひとりひとり頂いておりました。六変筮でしたので、その卦読みも楽しく、参加者通しで見せ合いっこをしてとても楽しいお年玉でした。ちなみに、宇澤周峰先生から伺いましたら、加藤大岳先生の時代は、特典での年筮は三変筮だったそうです。さすがに、人数が多かったからでしょうか。
加藤大岳先生は、岩波文庫『易経』の翻訳でも知られる、高田真治博士から孔子廟の周りで取った蓍を持ってきて見せてもらったことを、思い出されたと記述されています。
ちなみに、竹を採る時期については、筍から若竹に生長する期間は、栄養分がたっぷり含んでいるのでカッコウの餌食となるため、竹製品にすると、すぐに虫が入ってしまい駄目になってしまいます。そのため、秋から冬にかけて採ったものを使用していたそうです。さすがに、現代では乾燥技術がすぐれていますので、そのような心配は無用と推測します。
さて、一年の締めくくりに、反省と感謝の念を込めて、筮具を改めて、手入れをすることにしています。私が、一番良く使っている筮竹は、煤竹の一尺五寸です。椿油をほんの一滴、手のひらにとり、一本一本しごくように、磨いていきます。つややかになり、おのずと私の心についていた小さな汚れも、少しずつ取れていくような気がします。易卦を出すのには、数があれば何でも良いはずなのだけれども、何故、筮竹なのだろうか。考える問いに揲筮をしていると答えが出てきます。夫々方にお手入れの仕方があると思いますが、もし試される場合は、椿油をつけすぎるとホコリがついたり、べたつく原因になり、また上塗りの筮竹には向きません。ご注意ください。
「古人の跡を求めず、古人の求めたるところを求めよ」と芭蕉翁が言いました。古人が何をしたのかだけではなく、何をなそうとしたのか、その志を考えなさいという意味だと、私は解釈しています。どの道もまずは真似ることから入りますが、それの段階を過ぎたらなら、志を追い求めるように心がけたいと思います。
一年間、ご愛読いただき、ありがとうございました。来年もよき一年でありますように。皆様のご多幸とご健康をお祈り申し上げます。(磯部周弦)
日本易学振興協会では、宇澤周峰先生が東京などで易経とともに、本格的な筮竹を使った周易・易占教室を開催しています。主に、三変筮法、六変筮法を中心にした易占法です。詳細はこちらからどうぞ。