あけまして、お目出度うございます!新年のお祝いを申しあげます。
暮れには、恒例の〔年筮〕を執りました。筮竹を新しくしようかとインターネットの歳末セールで筮竹を購入しようかと、安価に飛びついてしまったら、届いたらプラスチック製で、がっかりしました。問い合わせると、筮竹とは書いてあるが、木製とは謳っていないとのこと。そりゃあ私の確認不足といえば、そうですが、インターネット広告には、気をつけないといけませんね。とはいうものの、情報収集から買い物まで、今はインターネットが主役の時代です。我が協会のホームページも、より充実させていきたいというのが今年の目標です。
しかし、プラスチック製の筮竹しか触ったことが無い易人もいるのかと思うと、いささか心配です。やはり筮竹は、握った時の、木の温かみや、捌いた時に、しなる感じがいいですね。気付けば、お箸だったり、お椀もプラスチックよりも木製のほうが、美味しく感じます。さらに、割り箸は、竹だとご飯がもっと美味しく感じるものです。
数年前の話で恐縮ですが、台湾へ旅行に行った時に、台北で最古の寺・龍山寺(ロンシャンスー)に参詣し、その地下街にあふれる命理街(占い街)を歩きました。100メートルほどもある長い商店街で〔占い横丁〕といった感じで、活気もあふれています。訪台の記念に本場の易者さんに占ってもらいたいと思ったものの、そもそも台北では、占いといえば、四柱推命や紫微斗数、手相、風水ばかりでした。老師風の占い師さんに鑑てもらいました。流派が色々有り勉強にはなりましたが、お目当ての易占はどこにもありませんでした。
そこで、お土産に筮竹か筮具でも買って帰ろうかと、筮竹、筮筒、掛扐器、算木のことを聞くと、算木なら知っていると教えてもらった土産屋にいくと、出してきてくれたのは〔そろばん〕でした。
テレビでも占い番組がずっと放映されているほどの占い大国台湾で、易にどうして出会えないのかと、あきらめきれずに、寧夏夜市(にんしゃー・よいち)へ行き、ぶらぶら歩いてみると、文鳥のような可愛い小鳥が64卦の描いてある〔おみくじのようなもの〕を口ばしにくわえて、それを人が読み上げる占いがあって、苦笑いしてしまいました。筮竹は、どこへやらでした。
筮竹に限らず、囲碁や将棋の盤、また、茶道なら、茶杓や茶筅も竹。太鼓のバチ、琴などの楽器も木製品がなじむようです。
「私たち人間が、石器の次に愛用したのが木ではないか」と主張されているのが、東洋英和女学院大学教授で茶道関連の著書も多数ある岡本浩一氏です。
「木に触れると、人類としての素朴な心性に、ふとつながる感覚が生じるのではないか」と力説されていらっしゃいます。
確かに歴史を振り返れば、易の誕生した古代にはもう、農具があり、☴巽でありました。石器時代から、青銅器時代へ変革するなか、木は道具のなかに残っていきます。
周易十翼の繋辞伝には、神農の後、黄帝・堯・舜の時代に、☴☳風雷益や☴☵風水渙の卦象をヒントに、木を削って、舟や梶を作り遠くへ移動したり、杵や臼をつくったり、弓矢をつくり、生活を便利にしていったことが書かれています。
「車を発明し、土のぬくもりや大地のエネルギーを忘れてしまったように、文明の便利な道具をひとつ手に入れて、自然から一歩遠ざかる。その文明と自然の間にあるのが、有機的な木製品なのではなかろうか」
文明の進化と自然からの乖離には、いささか賛成しかねますけれど、一理ありますね。
八卦では、☴巽は、風と木の象ですが、本卦では、☴☴巽為風と、風を採用しています。しかし、説卦伝では、〔巽為木〕と書かれています。巽を木と為し、風と為しと。何か理由があるのでしょうか?木を強調したかったためでしょうか。目線を上げると、あまり細かいところよりも、易は宇宙論だよと、公園の大きな欅が言っているようです。本年もお付き合いのほど、よろしくお願いもうしあげます。(磯部周弦)
日本易学振興協会では、宇澤周峰先生が東京などで易経とともに、本格的な筮竹を使った周易・易占教室を開催しています。主に、三変筮法、六変筮法を中心にした易占法です。詳細はこちらからどうぞ。
日本易学振興協会への入会、お問合せは、こちらから日本易学振興協会のサイトの管理運営担当です。まだまだ易占、易学の修行中、精進してまいります。伝統ある筮竹を使う周易を次の時代へつないでいきたいと思います。