爻という字は、易学をはじめる前は、知りませんでした。はじめて見る漢字です。爻の文字については、宮崎市定氏「素朴と文明の歴史学」には、次の説明がありましたので、紹介いたします。
古い時代、占いには主に2つの種類があった。1つは卜であり、亀甲を用いるもの。
もう1つは筮である。
筮は、箱のなかに、一定数の枝を入れて、繰返す。残った枝が偶数か奇数かを数える。
その際、間違えないように、ペアにして並べる。×のしるしをつける。
爻の字は、×を2つ組み合わせたものに他ならない。
「學」という学校の旧字をよく見ると、冠部分には、爻が入っています。
筮操作を弟子に、学ばせていったという意味にも取れそうですね。
さて、易経の八卦(はっか)は、少し難しい言い方をすればこれを小成卦といいます。
乾兌離震巽坎艮坤です。
陰陽3つの爻(こう)で構成されます。例えば、乾は☰と表します。
さらに小成卦を重ねた卦を大成卦といい、8×8=64卦あります。
大成卦は、六爻で構成されます。
下から上へ初爻、二爻、三爻、四爻、五爻、上爻と呼びます。
64卦×6爻=384爻あります。
それぞれの卦と爻に辞という物語がかけられています。
また易経や易占いの本を開くと別の呼び名もあります。
初九や六二という文字がありますが、これには法則があり、
初爻が陽だと初九、陰だと初六、
二爻が陽だと九二、陰だと六二、
三爻が陽だと九三、陰だと六三、
四爻が陽だと九四、陰だと六四、
五爻が陽だと九五、陰だと六五、
上爻が陽だと上九、陰だと上六
といいます。
つまり陽は九とし、陰は六とします。
参天両地は、爻の定位をあらわす。
「参天両地」といって、天は奇数で陽、地は偶数で陰です。これは、三才観の天人地でも説明しております。天は円で丸く、地は方で四角いという観念です。少し横道に外れますが、宇宙と小宇宙という例えのように、宇宙と人間は相似形です。天が丸いので、人の頭は丸く、地は四角いので、足は四角です。面白いですね。
この参天両地(さんてんりょうち)とは、易の爻と、定位を良く理解していただいた方なら、お分かりになると思います。陰陽の定位で、基本になる卦は☵☲水火既済でした。
この水火既済の卦画を見ますと、初爻、三爻、五爻に3つの陽爻があり、これが参天です。
同じように、二爻と四爻に陰爻があるので、両地。と表しています。
上爻の陰爻はどうしたのでしょうか?それはまた、色々と考えてみてください。
さて、原始では数を数えるには、まず片手ですので、五指で、
1,2,3,4,5とし、陽の奇数を合計すると9になり、陽の長じた数字としています。
また、陰の偶数を合計すると6となり、陰の長じた数字としています。
このあたりの数から占いが生まれてきたようで、この数字は、気学など東洋占術の根底に流れています。
これは本筮法に由来するのですが、説明が少し難しくなるのでまたの機会にいたします。
64卦のなかで「地天泰」(ちてんたい)という卦の爻で説明しますと、
このようになります。
上六
六五
六四
九三
九二
初九
初爻といっても初九といってもどちらで表しても結構です。
時間的な流れは下から上へと行きます。流れという概念は、上から下へといくのが一般的ですが、易占は、現在にいながら、将来のことを予知することから、逆になります。易経十翼・説卦伝には「易は逆数なり」という重要な一文もあります。