〔易は逆数なり〕この言葉は、周易翼伝・説卦伝・第三章にかかれていて、易経はもとより、東洋占術の考えをとても分かりやすく表現しています。
説卦伝は、易経の中でも、基本となっている乾坤艮兌震巽坎離の八卦・小成卦を詳しく解説しています。
訓読文は、次の通りです。
天地位を定め、山澤気を通じ、雷風相薄り、水火相射わず、八卦相錯わる。往を数うる者は順にして、来を知る者は逆。是の故に易は逆数なり。
易占に限らず、占いとは未来を知るための術です。相談者に対して、「そのうち、時が来たら分かるさ」。などと言っては答えになりません。
過去、現在、未来へとつながる線があるとしたら、いや、きっとあります。その連続性なのですから、未来から逆算して現在に教えてくれるものが、易占だと思うのです。もちろん、易占は単なる予言ではないのですが…。
「人生は、一寸先は闇」と言われます。火災、水災、交通事故、手術ミスなど等。人は災難に対して、結構、無防備なものです。だからこそ、「未来を知りたい」「より良い未来を手に入れたい」という願望は、誰しもがあるはずです。
当たったら恐いなどと占いのことを避けている人もいますが、それは暗剣殺、五黄殺、死冲殺、天中殺などの少しおどろおどろしい単語を使われ、占い師に脅し文句を言われるのが嫌なわけで、何とかして相談者を良い方向へ導くという姿勢が大切だと思います。これは個人的見解です。
数とは何でしょうか。
さて、未来から逆算というと、易の爻の位置も、時間的な流れは下から上へと行きます。流れという概念は、上から下へといくのが一般的ですが、易占は、現在にいながら、将来のことを予知することから、逆になります。気学の年盤、月盤も陰遁で数が減っていくものが多く使われます。
ここは、易占の基盤になる八卦の成り立ちを説明している部分です。本文にある「往を数うる者は順」の〔往〕は、過去のことで、覚えていればすぐに分かります。
一方、次の文の「来を知る者は逆」の〔来〕は未来のことで、これを知るのは難しいです。しかし、それが分かるのは易占です。
易経は、修身の書であると同時に占筮の書であることの裏づけになります。
また、古代より、数字には意味があり、数には神秘な力が宿るとされていました。占いはもとより、神秘の上に築かれているものです。不思議がなければ、占いにしろ、占術にしろ成り立たないと思っています。自然も森羅万象、八卦より以前に、まずは数字で表せるといった叡智がつまっています。それは、奇数が陽であったり、偶数を陰としたり、数は甲骨文字にも含まれています。繋辞伝にも「数を極め来を知る之を占と謂う」と丁寧に説明されています。
植物も新緑し、秋には落葉し、生い茂ったり増えすぎれば急に枯れてしまいます。数が増えていき、減っていく、十二消長卦でもあらわしているように、消息盈虚です。日本も人口減少を心配しますが、人間も増えていき、人口が減っていくものです。
昨日、今日、明日と連続したなかで、私たちは、現在を生きています。あの時、こうして置けば良かったと、過去を思い出しては、後悔し、いつまでもそれに縛れるよりも、今を、そして未来へと繋がるためにも、前を見て生きたいものです。
日本易学振興協会では、東京などで本格的な筮竹を使った周易・易占教室を開催しています。詳細はこちらからどうぞ。