梅雨の時期です。雨の後の虹を最後に見たのは、いつでしたか?
あのきれいな「虹」の漢字に虫偏が使われているのは、「虫」という字はもともと古代中国では、「蛇」のことを表していて、虹は、龍になる大蛇が天空を飛ぶときにできると想像されていたためでした。蛇を表す虫偏に天と地を結ぶという意味の「工」を加えて「虹」という漢字ができたのです。
確かに天のお告げをうかがう「巫」の字にも「工」が使われていて、「工」は天覆い、地載せ、人これを貫くという字で、天人地の法則に正しく従って、いささかも邪曲がないことを示したものであるという意味があったのです。私たち易者が使っている筮竹、筮筒などの「筮」という字もまたそういった意義を有しています。
さて、毎朝のお天気コーナーで登場する天達武史さんが、こんな事を説明していました。
雨の日は憂鬱ですが、雨が降らなければ虹はでません。人生に例えれば、つらい事の後には、きっと幸せがやってくるはずです。日本には、苦は楽のタネという表現がありますが、アメリカ・ハワイでは「ノー・レイン、ノー・レインボー」という言葉を使っていると話していました。素敵なフレーズで、何だか、明るい気分になりませんか?
ちょうど、☴☳風雷益三爻の爻辞「之を益するに凶事を用う。咎なし」に似ています。凶事というのは、必ずしも不幸とばかりは限りません。人間を磨くまさに砥石となって、その人を立派に育てあげることもあるということを宇澤周峰先生から、風雷益三爻の説明の際に、加藤大岳先生の若かりし時の逸話を交えて教えて頂きました。
加藤大岳先生、命の危機。
それは加藤大岳先生がまだ十七歳の頃、会津の実家から栃木へ教諭として赴任して早々、ウイルスに感染し、四十度を越える熱が十日余りも続いたことがありました。十七歳で学校の先生という点にも驚きますが、これはまた別の機会に。さて、この高熱が続き、町の医者もさじを投げたそうです。
後で分かったことですが、家族が棺桶の手配までしていたというほどですから、この時の病状はさぞ酷かったようです。
しかし、そこで九死に一生を得て、養生のあと麻痺した足の神経を治すためのリハビリに励みます。早朝五時ごろに起き、町はずれの田んぼの細道を朝露を踏んで、裸足で歩き回ることを日課にしたのですが、そこは、加藤大岳先生らしく、実に楽しかった。と思い出を振り返っておられます。
そのリハビリの時に、たえずつぶやきながら歩き続けた言葉が、
「錆(さび)は鉄を食う、嘘は人を食う!」という一文だそうです。
これはチェーホフの小説の中に出てくる一句で、錆が鉄をみるみる腐食していくように、一度嘘をつきだすと人は本来の善の心が腐ってくるという比喩なのかと思います。辛い事があっても、自分に素直に生きて、虹を見たいものですね。(磯部周弦)
日本易学振興協会では、宇澤周峰先生が東京などで易経とともに、本格的な筮竹を使った周易・易占教室を開催しています。主に、三変筮法、六変筮法を中心にした易占法です。詳細はこちらからどうぞ。
日本易学振興協会のサイトの管理運営担当です。まだまだ易占、易学の修行中、精進してまいります。伝統ある筮竹を使う周易を次の時代へつないでいきたいと思います。