易を嗜む者として、易経をより身近に感じて頂けるように、毎回易経の言葉を掲載しております。易経には、味わい深く、魅力的な語句がたくさんありますが、本卦から十翼の広い範囲で、特にこれは!という一節を選んで取り上げます。
〔或いは之を益す。十朋の龜も違う克わず〕この言葉は、☶☱山澤損六五と☴☳風雷益六二の爻辞に出てきます。訓読文は、次の通りです。
或いは之を益す。十朋の龜も違う克わず。
384爻ある周易の爻辞のなかでも、占者にとりまして、戸惑いなく占考が出来る嬉しい爻辞です。
会員諸賢に、あえて説明するほどでもないと思いますが、☶☱山澤損六五と☴☳風雷益六二は、顚倒した位置関係にあります。易の用語で言えば「綜卦」になっていて、同じ爻辞がかかっているわけです。
他にも同様に、周易六十四卦のなかには☱☰澤天夬九四と☰☴天風姤九三にも「臀に膚なし」と同じ辞がかかっているものもあります。このあたりも易経は、妙味がありますね。
話を本題に戻しますと、〔十朋の龜も違う克わず〕とは、高価な亀の甲を使い、亀卜で占っても間違いない。という意味です。筮してこの爻を得た時は、思わず顔に出てしまいそうですね。
今回は〔亀〕を取り上げてみたいと思います。
以前、プロ野球の西武ライオンズで活躍した十亀(とがめ)投手をはじめ、十亀さんという名前の人に会うと、有り難い感じがします。他にも、浅草のどら焼きで有名な老舗〔亀十〕もなにかすごい感じがする名前です。どら焼きは、個人的には東十条の〔黒松〕が好きです。
紀元前16世紀、古代・殷王朝の時代には、亀卜で占った卜兆を記録し、情報管理をしていたことが分かっています。どのようにひび割れていたか、その見出しの卜辞、卜兆、全文を記録したいわゆる〔占断ノート〕です。記されている甲骨文字は、世界で一番美しい古代文字とも称されています。
古代・殷の時代には、亀卜で占った卜兆を記録し、情報管理をしていたことが分かっています。どのようにひび割れていたか、その見出しの卜辞、卜兆、全文を記録したいわゆる〔占断ノート〕です。記されている甲骨文字は、世界で一番美しい古代文字とも称されています。
卜辞を見ると、当時の殷の王が自ら占い、自らが出陣した記録も多く残っています。
易経では〔十朋の亀〕が登場しますが、殷や周の始め頃では、まだお金として硬貨が普及していなかったので、子安貝を貨幣のかわりにしたと思われます。
子安貝は、中国大陸の東南海岸でしか採れないため、大変価値があるものでした。貝が、お金の替わりに使われたことから、その名残で現在も財、貯、買、貸、贈などお金の漢字に「貝」の字が残っています。
その子安貝に、紐を通してつづり、二連を一組とした形が「朋」です。青銅器銘文に王から賜った品として「五十朋」「百朋」なんていう大きな単位もあり、流通量がだんだん増えていったことも分かります。
したがって、こんなに高価な亀の甲羅で占っても間違いはないことを告げている絶対的な断定表現です。
左氏伝では「筮は短にして、卜は長く」
ついでながら、太古の王室の占い師は、分かりやすく言えば、王室御用達となった占人で、「貞人」と呼んでいました。祭祀と軍事に携わる官吏(かんり)とした役職で、卜占は、国家の大事に深く関与していたのです。占というより清祓という様なひとつの宗教的儀礼の意が強かったようです。
亀は、繋辞伝にも描かれているように、易神の示が伝わるように、亀卜から筮竹へと移行していったのではないか思います。
易経・繋辞伝第十一章では、【賾を探り隠れたるを索め、深きを鉤り遠きを致し、以て天下の吉凶を定め、天下の亹亹を成す者は、蓍亀より大なるは莫し】と卜筮に触れている箇所があり、筮には蓍(めどぎ・めどはぎ)を用い、亀の甲羅は、亀卜に用いられる神物で、卜と筮の働きを説明している部分では、これより大きい効能のものは他にないという解説でした。
さらに、河図・洛書と対で覚えていますが、その説明が周易翼伝・繋辞伝にあり、先に出現したのが、「黄河から表れた図」ということで河図となっています。
龍か馬のお腹や背中に書かれたもの。それに対して洛書は、洛水から現れた、亀の甲羅に描かれていたという伝説です。先天図、後天図へと繋がっていくところですが、話が膨らみすぎてしまったので、亀に戻します。
亀は、神につながり、卦ともつながり、神の啓示を教えてくれるといいます。漢字の読みも何だか似ている気がします。
左氏伝では「筮は短にして、卜は長く」とあり、卜とは鹿の骨や亀があるので、筮竹を用いる以前は、亀卜を重視していたようです。
東京大学名誉教授で中国古代思想の赤塚忠(きよし)博士によりますと、甲骨文や金文の研究をされていて、神話や伝説の形が判ってきたそうです。
「上古の時代には、亀族、龍族がある。他にも鳳凰族などもあるが、例えば、殷周の前に存在したとされる伝説の夏王朝の禹王は龍族である。禹王は重要な水源の神としていた。そして、亀は大地の神として祀られていた」多分そういう事だろうというのです。
ならば、私は、何族に部類するのだろうかなどと、色々と興味深いところですが、今回は亀の話なので、また別の機会にしたいと思います。色々と興味深いところですが、今回は亀の話なので、またの機会にしたいと思います。
つまり、亀は神聖視されて、水底を安定させたり、大地を安定させる神霊ということになってきました。また、その「安定させる」意味から、卜占には亀の甲羅を用いることにもなったのだというのです。
中国では碑を建てるとき、その土台には亀形の台の上に載せていますが、それは亀が物を根本から動かさないよう、安定させているという信仰に、展開していった様子です。
今回は、亀卜や亀に焦点を絞りましたが、現在では、相談者の悩みの一助けになったり、生活上、経営上のヒントとなっている易占が、実は、国の興亡を賭けていたほどの器の大きなものであったことが分かります。
日本易学振興協会では、東京などで本格的な筮竹を使った周易・易占教室を開催しています。易占いで分かるのは、恋愛問題、相手の気持ちだけではありません。生年月日が分からなくても、占えます。詳細はこちらからどうぞ。
日本易学振興協会への入会、お問合せは、こちらから

日本易学振興協会のサイトの管理運営担当です。まだまだ易占、易学の修行中、精進してまいります。伝統ある筮竹を使う周易を次の時代へつないでいきたいと思います。