夏です。強い日差しが照りつけ、じっとしていても汗ばむ暑い日ですが、ビールが美味しい季節です。ビール党の方もいらっしゃると思いますが、ビールを初めて飲んだ若い頃は苦かったはずが、いつからでしょうか。あんなに苦かった味なのに、今はゴクゴク飲んでしまいます。古い歌謡曲に「若いという字は、苦い字に似ている」という文句を思い浮かべました。
さて、明治の高島嘉右衛門は、易者として有名ですが、実業家としても横浜の町づくりをして鉄道や学校、ガス灯など多くの功績を残しています。以前に上田峰萃さんが会報「岳易開成」紙上にて連載されていた『日本の易の流れ』によりますと、高島嘉右衛門は、横浜にあった〔天沼ビア酒〕というビールがお気に入りだったそうで、これが今のキリンビールの前身です。
そのロゴマークである麒麟は、龍や鳳凰、霊亀などと同じような東洋の聖獣です。辞書には、聖人が登場して、王道政治の行なわれる時に現われるという想像上の霊獣とありました。『礼記』には、王が〔仁〕のあふれる政治を行うときに現れる瑞獣が麒麟である。との言い回しもあります。
また、『史記』や『春秋左伝』には、哀公14年春、魯が西方に於いて狩りをしたところ、麒麟を獲た。これは見たことがない動物なので不吉だ。とあり、その後、孔子が確認したところ、これは麒麟だといった場面があります。春秋時代は戦国乱世ですから、そのような乱れた時期に霊獣を捕まえてしまうということは天の道理から外れてしまうことだと嘆いたそうです。
キリン「一番搾り」のビール缶には、聖獣麒麟の絵が描かれていますが、その柄にはカタカナのキ・リ・ンの3文字が隠されているそうです。この隠れ文字は、1933年のラベルからあったそうで、制作者の遊び心が楽しいですね。機会がありましたら、ラベルの中を探してみてください。
さて、加藤大岳先生の易学研究会では、クーラーもそれほど普及されていない猛暑は、〔ねそべり座談会〕と称して雑談を交えながら、易学の勉強会を行われたそうです。その後の懇親会では、居酒屋へ。なじみにされていたのは、上野・湯島にある居酒屋・岩手屋。聖地巡礼ということで、岩手屋へ易友を誘って、行ってみました。
湯島にある居酒屋・岩手屋さんへ易友と
広小路から少し歩き、大通りから路地に入ったところにありました。赤提灯に縄のれんが、またいかにも居酒屋といった店構え。入口には「奥様公認酒場」と銘打たれて洒落がきいています。中に入ると、店内はカウンター席とテーブル席が4つほどだったでしょうか。どこか安心する景色です。壁にはお酒飲みには嬉しいお品書きが、いくつも貼ってあり、店員さんにおすすめのつまみなぞ聞きながら注文。地鶏や郷土料理はどれも美味しく、東北の雰囲気を味わいました。ビールに続いて、地酒を徳利でたのみ、居心地よく長居してしまいました。
お会計を済ませた後に、あまり使っていないという二階席を見学させてもらうと、平民宰相といわれた岩手出身の原敬の肖像画や岩手山の絵も飾ってありました。
千鳥足で帰えろうとすると、数メートル近くに岩手屋支店なる店を発見。
どうやら本店の親戚の方が経営されているようで、加藤大岳先生の時代も懇親会参加者が増えてから支店に変えられたそうです。また次回の楽しみが出来ました。
八卦では、お酒は☵坎です。やはり、飲み過ぎてしまっては、悩みを生みそうです。飲食の道を説いている☵☰水天需の卦がありますが、周易翼伝の序卦伝でも、「需とは飲食の道なり」そして「飲食には必ず訟あり」となっており、飲食には争いごとがともなうのですね。
名言が多い中国古典『菜根譚』に、こんな一文を見つけました。
〔花看半開 酒飲微醺〕
花は半開を看(み) 酒は微醺(びくん)を飲む。と読み、花見は、満開の花ではなく、五分咲きを眺めるのが風流であるように、お酒も深酒ではなく、ほろ酔いの酒を飲むのがいい。という意味なのだそうです。妙味がありますね。
(磯部周弦)
日本易学振興協会では、宇澤周峰先生が東京などで易経とともに、本格的な筮竹を使った周易・易占教室を開催しています。主に、三変筮法、六変筮法を中心にした易占法です。詳細はこちらからどうぞ。